急な気温変化による3つの不調と改善策
冬の寒暖差で体調は崩れがち…急な気温変化による3つの不調と改善策
冬は気温の変化が激しく、昨日はコートを着ても寒かったのが、今日になってみたら同じ服装だと少し暑いくらいになっていることもありますよね。
このような寒暖差が起きると、風邪をひくなど体調を崩しやすくなったりしますが、なぜ不調を招いてしまうのでしょうか。
今回は寒暖差による不調について、メカニズムや改善方法を医師の建部先生に解説していただきました。
寒暖差による不調はなぜ起こるの?
原因
人間をはじめとする哺乳類は体内環境を出来るだけ一定に保つことで生命活動の円滑化を図る機能、「恒常性機能」を持っています。
私たちの体はこの恒常性機能によって、例えば ・体温、血圧、体液の浸透圧やpHなどの安定 ・細菌、カビ、ウイルス、アレルゲンといった異物(非自己)の排除 ・創傷の治癒 など、生体機能全般を維持しています。
外気温差が大きい場合、この恒常性機能によって、体温を生み出したり、体の熱を逃がしたりを頻繁に繰り返し、できるだけ体温を一定にしようと働くため体に負荷がかかります。
また、細かいところでは血圧や体液の浸透圧なども連動して変化するので当然、体調変化を生じます。
外気温が比較的ゆっくり変化すれば、人の体も徐々に対応できるため、その負荷と体調変化は少なくて済みますが、外気温が急激に変化すると、体温調整をはじめとする全身状態の維持に自律神経系(交感神経と副交感神経)の切り替えを激しく行わなくてはいけなくなりますので、より多くのエネルギーが必要となり、全身の不快な症状・より大きな体調変化が現れることが考えられます。
症状
・冷え
・だるさ
・めまい
・眼精疲労
・顔のほてりなど
改善方法
適度に負荷のかかる運動を、日常に取り入れてみるのがよいでしょう。
これにより体を動かすということだけではなく、筋肉量の増加が期待できるため、
・血行が良くなる
・代謝が上がることで体温が上がりやすくなる
ということが考えられます。
特に足の筋肉は血液を体中に送り出す「ポンプ」の役割を担っているので、足の筋肉を意識した運動を取り入れてみてはいかがでしょうか。
寒暖差による不調1:肩こり
原因
肩こりの原因にはいくつかありますが、寒暖差のストレスによる自律神経の乱れによるものも考えられます。
特に急に寒くなった場合、その寒冷ストレスに対応すべく自律神経系の交感神経の作用が優位になり、ストレスに負けないよういわゆる戦闘モードに体が切り替わります。
結果、心拍、血圧が上がり、体には自然と力が入り毛細血管を収縮させ体温を逃がさないように反応し筋肉を硬くします。
その筋肉の硬い状態がなんとなく長く続くと肩こりになり得るのです。
症状
・肩が張る
・肩の痛み
・肩の力が抜けない感覚
・肩から首にかけてコリを感じる場合もある
改善方法
肩を温めたり、場合によってはゆっくり入浴するなどして血行をよくしたり、軽い運動を行うことは自律神経の調節の観点からも、コリをほぐす観点からも非常に有用と考えられます。
寒暖差による不調2:寒冷蕁麻疹
原因
皮膚の温度が急速に下がると、自律神経系の交感神経の作用により、血管がやや過剰に収縮傾向になる場合があります。
その際、皮膚の下の血管付近にある肥満細胞が刺激され、血管拡張作用のある「ヒスタミン」という化学物質が放出されることで血流改善の働きが体内で起こります。
ヒスタミンは、それ以外にも血圧降下、血管透過性亢進、平滑筋収縮、腺分泌促進の作用がありますが、痒みを引き起こす重要な役割も果たしています。
またヒスタミンには、痛みや痒みを知覚する「知覚神経」にも作用し、その刺激がかゆみとして大脳へ伝達されるとともに、その刺激は神経の末端にも伝えられ、神経ペプチドと呼ばれる神経伝達物質を放出させます。
神経ペプチドは肥満細胞を刺激し、さらにヒスタミンが分泌されて痒みが強くなっていってしまいます。
血管透過性があるため血管外の組織に血漿(けっしょう)が漏れ出る状況も発生。
漏れ出た血漿は皮膚の下から激しい痒みとともに蕁麻疹特有のふくらみ、膨疹として現れます。
ちなみに、寒冷蕁麻疹は激しい温度差による皮膚への刺激が原因でどこでも発生する可能性がありますが、しもやけは低温による血行不良が原因で手足の指や耳、鼻などの末端部の血行不良が発生しやすい場所に生じます。
症状
・膨らんだかゆみを伴う、赤い発疹が出る
・冷えたときに起こる
・局所が冷えたときに起こるものと、全身が冷えたときに起こるものがある
・めまいや頭痛が出ることもある
改善方法
寒冷蕁麻疹の場合は、一般的な蕁麻疹と異なり冷やすとかえってかゆみが増してしまいますので、温めること、また、悪化を防ぐためにできるだけ掻かないことが大切です。
繰り返す場合は皮膚科で相談し、処方を受けるとよいでしょう。
寒暖差に強くなる体づくり
体を急激に冷やさない 免疫力を保ち、体力を落とさないようにしておくことは大切なことです。
エアコンに頼りすぎない
冬場に極端に室内の温度を高めたりすると内外の温度差によって症状が強く出ることがあります。
適度に体を動かす
こちらは自律神経の不調を整えるために有効な方法といえます。
最後に建部先生から一言
現代に生きる私たちは昔に生きた人々と異なり、自分の体で体温調節をしなくとも自宅やオフィス、電車内やバス内、買い物先などのエアコンが快適な温度環境を提供してくれますが、本来、体が持っている体温調節機能が衰えてしまって当然です。
結果、少し暑くなったり寒くなったりすると体がバテてしまう
・風邪をひいたりしてしまう
温度変化に弱い体になってしまっています。
この状態を改善する方法は述べましたが、すべての人が実践できるわけではありませんし、完全な対策でもありません。
季節の変わり目など温度変化の激しい時期は、どんなに工夫しても誰でも体調を崩しがちなものなのです。
現実的には、周囲の温度に応じて衣服を簡単に着脱する工夫や、外気温が下がったと感じた際は、体温上昇効果のある生ショウガやニンニクを料理に使ったり、穏やかな血行促進やリラックス効果が期待できる温かいココアやほうじ茶などを摂るなどのひと工夫から始めてみてはいかがでしょう。
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