効率よく歩いて運動量を増やすコツ
今、日本国民の一日の歩数が足りないといわれている。
厚生労働省の目標値から、平成26年は1500~2000歩ほど足りなかったのだ。
しかし、ただちょっと歩こうといっても、今の習慣をすぐに変えるのはなかなかむずかしい。
そこで、一般ビジネスパーソンがより積極的に“歩く”ためのアイデアをウォーキングの専門家に聞いた。
■男性は一日9000歩、女性は一日8500歩が目標
厚生労働省が発表した「健康日本21(第2次)」では20~64 歳の男性は、一日当たり9000歩、女性 は8500歩が目標値として掲げられている。
果たして、この目標歩数は現実とどれほど離れているのだろうか?
同じく厚生労働省による「平成26年国民健康・栄養調査」の結果では、20~64歳の一日の歩数の平均値は、男性7860歩、女性6794歩と、目標値には及ばなかった。
つまり、あと1500~2000歩ほど増やす必要があるのだ。
■会社員が効率よく毎日歩き続けるヒント
毎日、約1万歩を達成するとなると、ビジネスパーソンは実際どのようにすればいいのだろうか。
すぐに「無理」と感じる人は多いだろう。
そこで、デューク更家氏に弟子入りし、ウォーキング理論を習得したという、みのわあい。さんに、ビジネスパーソンが歩数の目標を達成するためのヒントを聞いてみた。
「一日に歩ける歩数は人それぞれです。
都会では、ちょっと歩けば1万歩くらいいくのでは?
一方で、車を使う人やデスクワークの人などはやはりどうしても歩数が少なくなってしまいますよね。
そこで提案したいのが、ただ歩数を増やすよりも、効率的な歩き方をすることです。
例えば歩幅を広くして少しスピードアップして歩くことで、運動量を上げるなど、歩数だけにこだわり過ぎないことも大切です」
健康を手に入れるためには、歩数や距離だけにこだわらず、歩き方を工夫することが大事だという。
そこでみのわさんが勧めるのが、「歩幅」を大きくして歩く方法だ。
「日本人は、着物を着て草履を履いていた文化があるため、小股でちょこちょこ、すり足ぎみに歩くのが、私たち日本人の歩き方のクセ。
大股で歩くと着物がはだけてしまうので、動きが制限されます。
そのため歩幅は50cmから70cm程度では?」
みのわさんによれば、小股で歩くのと大股で歩くのとでは次のような違いが出るという。
●小股で歩く:すり足でペタペタ歩くと、膝が曲がり太ももの前側の筋肉を使う。
この太ももの前側の筋肉は、ブレーキの役目がある。
よって、ブレーキをかけながら歩くような歩き方になってしまう。
●大股で歩く:大股で歩くと、太ももの後ろ側の筋肉を使う。
これはアクセルの役目を果たす筋肉(ハムストリングス)。
歩幅を広げることで、身体がぐんと前に出てスピードも出る。
小股で歩くよりも、運動量が上がる。
■大股で歩く歩幅の取り方
時間的にも、運動量としても、より効率的に歩きたい場合は、小股よりも大股で歩くのが良さそうだ。
そこでみのわさんに、大股の歩幅の取り方を教えてもらった。
<大股で歩く方法>
両足を揃えて立つ。
「ヨーイドン」の「ヨーイ」のときのように、右(左)足を後ろに下げる。
「ドン」のときのように、右(左)足をつま先から蹴り出すようにして一歩前に大きく出す。
着地する時は、膝が曲がらないようにして、かかとから着地する
「このように、ヨーイドンで動かす足の歩幅が、大股の歩幅です。
この歩幅で歩いていきます。
コンパスの中心がみぞおちにあるイメージで、足を身体の後方から前に出すのがコツです」
大股で歩くと、全身運動になるのだという。
「足の付け根である、みぞおちのところから足の太ももの裏にかけて、大腰筋というインナーマッスルがあります。
この大腰筋は、背骨、足の付け根につながる筋肉で、大股で歩くときによく使います。
つまり、大股で歩くと、インナーマッスルまで使う全身運動になるというわけです。
ぽっこりお腹の解消にもつながりますよ。
この歩き方だと、ちょっと3分くらい歩くだけで汗だくになります。
例えば、デスクからトイレに行くときなどに、ちょっと大股で歩いてみてはいかがでしょうか?」
■なぜ歩くのか?
なぜ歩かなければならないのか?
モチベーションUPの考え方 将来、病気にならないためとはいえ、毎日歩くことへのモチベーションを保つのは厳しいものだ。
そこで、みのわさんに、歩くことへのモチベーションを高めるコツを教えてもらった。
●脳・心・身体の疲れのバランスをとればよく眠れる
「継続的に適度な強度の運動を行うことで、睡眠の質が向上します。
睡眠に最適な運動として、ウォーキングなどが推奨されています。
ある程度心拍数の上がる運動を習慣にすることで、質の高い睡眠が得られるといわれています。
歩くという運動習慣は、身体の健康だけでなく、睡眠の質を向上させ、精神的な健康を保つにも役立てることができます」
●歩くと脳が動き出す
「『歩』という漢字は、「止」まるのが「少」ないと書きます。
これは、脳が止まるのが少ないということです。
よく玄関を出た瞬間に、「あれ忘れた!」とか、「電気ちゃんと消したかな?」など急に思い出すことってありませんか?
それは、歩くと脳が動き出すからなんです。
骨盤の中心である仙骨は、二足歩行する人間にしかないものなのですが(ゴリラもあるが小さい)、背骨の付け根でもあり、頭蓋骨と連動しているんです。
仙骨は歩くことで、脳の刺激にもなるんですよ。
歩くというのは、脳とすごく連動しているということなんです。
ビジネスパーソンにとって、いいアイデアを浮かべるためにも、歩くことが活用できます。
もし、2~3人の少人数であれば、歩きながらの会議もおすすめです。
歩くということは前進することなので、アイデアも前向きなものがでてくるかもしれません」
●大股で歩くとふくらはぎの筋肉を使うためむくみ解消にも役立つ
「大股で歩くとき、自然にかかとから着地するように歩くことで、ふくらはぎの筋肉を使います。
ふくらはぎがポンプの役目を果たし、心臓へと血液を戻す働きが促進され、全身の血流が良くなり、脚のむくみの解消にもつながります。
夕方頃になると脚がだる重く感じるデスクワークの方などは、帰宅時は、少し意識して歩いてみてはいかがでしょうか?」
歩くことは、身体の程よい疲れを促し、むくみ解消に役立つほか、仕事にも良い影響が出ると得が目白押しだ。
ぜひ「大股」とい裏技を使いつつ、毎日歩くことを楽しんでみてはいかがだろうか?
(取材協力) みのわあい。さん
20代でデューク更家氏に弟子入り。
心身の健康について学び、ウォーキング理論を習得。
デューク更家氏のアシスタント、イベント出演、インストラクターの指導等に携わる。
2014年より医学博士 橋本和哉医師のもと医療ヨガを学ぶ。
健康づくりやウォーキングやストレッチなどの運動、姿勢教室や講習会での講師、学校や企業での健康指導や講演会等。
他にメディア出演、雑誌、専門誌の記事監修、健康づくりやウォーキングに関するコラム執筆、エクササイズ等のコンテンツ提供他、テレビショッピングのゲストコメンテーターなどの活動も。
http://iwalkwith.me/
取材・文/石原亜香利
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