40~50代の冬は腰痛要注意シーズン
【医師が注意喚起】
40~50代の冬は腰痛要注意シーズン。抑うつとの相関ありのデータも
【調査概要】
調査期間:2016年11月
調査方法:ネットアンケート
調査対象:40歳以上の男女601人(「あなたの体の悩みは?」という質問に、「腰痛」と答えた人=腰痛あり:208人、腰痛以外を答えた人=腰痛なし:393人)
腰部脊柱管狭窄症の専門情報サイト「脊柱管狭窄症ひろば」を運営する株式会社わかさ出版は、2016年11月、40歳以上の男女601人に対し、体の悩みに関するアンケートを行いました。
体の悩みの中でも、特に「腰痛」の有無に分け、回答内容を分析し、「腰痛」に悩んでいる人の実態を調査しました。
◯各年代で3割以上が「腰痛」に悩み、特に40~50代の割合が高い
まずは、体の悩みで「腰痛」と答えた人の各年代の割合を見てみると、全体では3割以上、年代別に見ると40代では35.7%、50代では、36.9%の人が「腰痛」に悩みを持っているという結果になりました。
一般的には、60代以上の高齢者の方が、腰痛に悩んでいると思われがちですが、40代・50代の方が腰痛に悩んでいる割合が高いという結果でした。
◯腰痛の始まりは40代がピーク、20代、30代で我慢した腰痛が40代で耐えきれなくなる!?
そこで、体の悩みで「腰痛」と答えた人で、腰痛が始まった年代を聞いたところ、「10代」から徐々に増加していき「40代」でピークを迎え、「50代」以降は減りつづけていくという結果になりました。
この結果に対して、さいたま市浦和区の清水整形外科クリニック 院長・清水伸一医師は、「特に40代が多いのは、腰痛に意識的になる、ということかもしれません。
20代、30代では少しの腰痛があっても我慢してしまう人が多く、それが40代になって耐えきれないほどになってから、初めて自分の腰痛の悪化に気づく人が多いのです。
実際、私のクリニックに駆け込んでくるのもそのような40代の患者さんが多く見られます」とのことです。
◯「腰痛」に悩んでいる人は、「腰痛」に悩んでいない人よりも「抑うつ傾向」が2.29倍高い結果に
アンケートでは、簡易的に抑うつ病の傾向がチェックできる「SPQ-D 東邦大式調査表」を用いて、抑うつ傾向を調査しました※。
調査は、加点方式で「抑うつ傾向あり」「境界領域」「抑うつ傾向なし」の3段階に分けられます。
「腰痛」に悩んでいない人(=腰痛なし)は、「抑うつ傾向あり」が10.9%、「境界領域」は20.4%、「抑うつ傾向なし」が68.7%でしたが、「腰痛」に悩んでいる人(=腰痛あり)は、「抑うつ傾向あり」が25.0%、「境界領域」は22.1%、「抑うつ傾向なし」が52.9%と、「抑うつ傾向あり」の割合が、「腰痛」に悩んでいない人に比べて、2.29倍高い結果となりました。
清水先生によると「慢性的に腰痛に悩む患者さんは、どうしても気分が落ち込みがちです。
『この痛みがずっと続くのか』
『この痛みを他人に分かってもらえない』
『仕事を続けられるだろうか』
など、悩みは患者さんによって異なりますが、腰痛を起因として不安・ストレスを感じて、抑うつ傾向になってしまう患者さんも多く見受けられるのが腰痛の厄介なところです」とのことです。
※このチェックは、あくまで抑うつの傾向を調査したもので、アンケート回答者のうつの医学的な診断をするものではありません。
◯年代別では「腰痛」に悩んでいる「40代」は「抑うつ傾向」が最も高く、腰痛が仕事に影響のある人は特に注意
先の抑うつ傾向に関する項目で、「腰痛」に悩んでいると答えた人の年代別に「抑うつ傾向」を分析すると、40代での「抑うつ傾向あり」の割合が39.3%、50代が16.0%、60代以上が14.3%と、40代が他の年代に比べ、倍以上高い結果になりました。
「腰痛の始まった年代」が「40代」の割合が最も高かったこと、さらに社会的な責任も大きくなることも考えると、「40代」・「腰痛に悩んでいる」・「抑うつ傾向」には相関性があると推測できます。
「これは当然の結果かもしれません。
40代となると、一般的に仕事も責任も増え、ストレスも大きくなる年代。
そこに前述のような腰痛に起因する不安・ストレスが加わるので、抑うつ傾向が他の年代より高くなるのも納得です。
仕事に関していえば、営業などで移動が多い、接客で立ち仕事をしている、肉体労働に従事しているなど腰痛の影響が仕事に直結する人は、特に不安感やストレスが大きいので注意が必要です。
また、50代以上の人は、時間に余裕のある人が増え、痛みが出たときにはきちんと診察を受け、日頃からしかるべき対処をして腰痛が軽減されることで、結果抑うつ傾向になる割合が低くなるのだと考えられます」(清水先生)。
◯腰痛に悩んでいる人でも病名キーワードの認知度は低い
腰痛の重大原因となる代表的な病名のキーワードについても質問しました。
「腰痛」に悩んでいる人で、「言葉の意味や症状を良く知っている」という人でトップだったキーワードは、「椎間板ヘルニア」でした。
次に、「脊柱管狭窄症」、「腰椎すべり症」と続きました。
しかし、逆にトップ3のキーワードでも、「言葉は知っているが、意味や症状を詳しく知らない」と「言葉を聞いたこともない、まったく知らない」を合わせた数字は、「椎間板ヘルニア」は49%、さらに「脊柱管狭窄症」は75%、「腰椎すべり症」は86%と、腰痛を引き起こす原因となる、これらのキーワードはまだまだ一般的に認知されていないという結果になりました。
清水先生はこの結果に対して、以下のようにコメントしています。
「私のクリニックに腰痛で来院される方のほとんどは、腰痛のきちんとした原因を把握していません。
確かに、腰痛の80%以上は原因が分からないといわれていますが、残りの20%かどうかもきちんと診察しないまま腰痛を放置している人が多くいます。
間違った知識で自分の腰痛の原因を決めつけるのもよくありませんが、きちんと診察を受けることではっきりとした原因がわかることもあります。
原因がわかれば、自分の腰痛に対する不安・ストレスも軽減されるので、先ほどの抑うつ傾向なども少なくなり、前向きに腰痛対策に臨めます。
ですので、このようなキーワードを知り、診察を受けきちんと自分の現状を把握することも重要なのです」(清水先生)。
◯腰痛対策は「運動する」がトップでも、きちんと「予防の体づくり」はできていない?
「腰痛予防・対策にどのようなことをしますか?」という質問では、「運動をする(ストレッチ、体操、筋トレ、ウォーキングなど)」が49%と半数に近いトップに。
続いて、「塗り薬/貼り薬を使う」48.1%「姿勢を変える」44.2%となりました。
1位になった「運動」について、清水先生は、「運動で腰痛の予防・対策をすることは間違っていません。
しかし、多くの人は『痛みが消えたからもういいだろう』と考えてしまうことが問題です。
これでは、また腰痛が再発して、いつまでも腰痛が根本的に解決しません。
実際に、患者さんの中には、私のクリニックに来院して、改善方法を指導し、その場で痛みが軽快して以降来院せず、しばらくすると腰痛を訴えて再度来院する、ということをくり返す患者さんが多々見受けられます。
本当に大切なのは『腰痛の出ない体づくり』を継続して行うことです。
腰痛がないときでも、日常的にマッサージや運動を継続することで、痛みの出ない体づくりをすれば、腰痛の再発が防げ、のちのち腰痛が悪化して日常生活に支障が出るような事態も避けられるでしょう」(清水先生)。
◯清水整形外科クリニック院長 清水伸一先生おすすめ「スーッと背伸び」で腰痛撃退!
腰痛の患者さんに向けて、清水先生から腰痛対策の体操もお聞きしました。
「運動をすることは腰痛の予防・対策に重要なポイントですが、もう一つ重要なポイントは『姿勢』です。
腰痛を避けるために、患者さんの多くが前かがみ姿勢を取りがちです。
しかし、前かがみ姿勢は背骨本来のS字カーブ(ナチュラルライン)がくずれ、胸椎の後弯が強まる「曲がり胸椎(ネコ背)」を引き起こします。
この曲がり胸椎の悪影響は全身に及び、肩こりや慢性疲労、肥満、集中力の低下、冷えなどを招くことになります。
腰痛の予防・対策のためにも、この曲がり胸椎を正しい姿勢に導くことが必要になってきます。
そこで、おすすめの体操は『スーッと背伸び』です。
やり方も簡単なので、ぜひ試してみてください。
「スーッと背伸び」のやり方
上の図の動作を、3回くり返すのを1セットとして、まだ体が硬い朝は3セット、昼は5セット、夜は6セットを目安に行ってください。
『スーッと背伸び』は、イスに座って行うので、オフィスで座ったままでも、テレビを見ながらでも簡単にできます。
『スーッと背伸び』をきちんと続ければ、腰痛の人が陥りがちな前かがみ姿勢が解消され、全身に送られる血液や酸素の量が増えて腰痛以外の症状を緩和することにもつながるでしょう」(清水先生)。
動きがわかるように下に動画も用意しているので参考にしてください。
◯冬場は腰痛の増大時期で医師も注意喚起、予防・対策はしっかりと
最後に、清水先生からアドバイスをいただきました。
「特に寒さが厳しくなってくる冬は腰痛が悪化する患者さんが多くいるので注意が必要です。
冬に腰痛が悪化する理由のひとつは、寒さで体が縮こまることで前かがみの姿勢をとって、先述の曲がり胸椎の状態になりやすくなるからです。
もう一つは寒さで筋肉が萎縮・緊張して硬くなりやすくなることです。
背骨を支える筋肉が萎縮・緊張してしまうと、腰椎や骨盤が歪んでしまい、腰痛となって現れる場合があるので注意が必要です。
特に今回のアンケートで、「腰痛のはじまった年代」「抑うつ傾向」がともに高かった40代はもちろん、腰痛に悩んでいる人の割合が多かった50代の人も、冬は腰痛の悪化に十分に注意してください。
腰痛は悪化すると立てなくなる・歩けなくなるなど、生活に支障が出る厄介なものですが、きちんと診察を受けて、自分に合った体操や生活習慣などを身につければ予防・対策ができます。
この冬はきちんと体を温めてマッサージなどで筋肉をほぐし、『スーッと背伸び』で姿勢を正して腰痛の予防・対策を試みてください」(清水先生)。
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